「地唄箏曲演奏家 小野真由美」

 2014年当時年間1000万人であった訪日人口も2019年では3000万人を超えようとしていた。その初回の訪日が「ショッピング」や「日本食を味わうなど」の目的であったものが、2度目の訪日からは「日本の四季を体感する」「日本の歴史伝統文化に触れる」などの日本風土への興味と変化していた。これは、訪日の方々の日本への関心が、日本文化の奥深い無形のものへと変化しているものである。古来より大陸から日本にわたって蓄積された文化は、さらに成熟したものとして厚みを持って先鋭化し、特に日本の古典芸能に関しては、歴史の流れの中でも消費されずに残った貴重な文化遺産と言える。

 しかし、現在のコロナ渦の影響で、今年2020年の日本を訪れる外国人の割合は90%減になっており、「日本の美しい文化に再度触れたい」と希望している海外の方々は、コロナの収束を待ち遠しく思われていると推測される。

 今回、記録映画として制作し世界発信を試みる、琴、三絃、地唄の世界は、一見地味なジャンルではあるが、古来からの伝統音楽として時代時代の流れによって培ってきたものであり、その和楽器の音色は、日本人ならではの優しさを、独特の音調で奏で、心を癒し、緩やかな時間を表現する世界となっている。

 この映画の主役である大分県出身者の小野真由美さんは、東京芸術大学を卒業されてすぐに、地唄箏曲美緒野会を設立され、永きにわたりその主宰者として、その芸を極め、数年前からは日本文化の海外発信を積極的に行うなど、日本の古典文化に多大な貢献をされている。日本文化の伝統は世界に誇るべき成熟文化であり、小野真由美さんは、わが国の文化や伝統の価値を世界発信する女性として、成熟世界に適合した新たな社会モデルの構築に努力されている方とも言える。

 文化芸術が生み出す社会への波及効果は計り知れないものであり、その価値を後世に残し、伝統文化と現在の共存を多様性を持って表現していく、これはその記録映画である。


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